PanasonicのLumix GH5 を導入したひとつの目的は、4K x 4K のドームマスター映像 がそのまま撮影できるという事です。
殆どのムービーカメラ/ビデオカメラは、16:9の横長の映像しか撮れません。
PanasonicのLumix GH5は、4Kフォト、6Kフォトという機能があり、アスペクト比を16:9、 4:3、1:1 と切り替えて動画の撮影できます。
ドームマスターは、縦横の解像度が同じなので、縦の解像度が大きく撮影できるムービーカメラが求められるのです。
GH5で、縦の解像度が大きく撮れるモードは、
2880×2880(4K PHOTO)
4992×3744(6K PHOTO)
です。
解像度だけを見ると4992×3744(6K PHOTO)が良いのですが、 2880×2880(4K PHOTO)のメリットは、60fpsで撮れる点です。
プラネタリウムのような10m、20mといった巨大なスクリーン映像の場合、 解像度も重要ですが、映像の動きの”ゆったりさ”も重要になってきます。
速い動きのあるシーンは、60fpsで撮影し30fps再生でスローモーション映像にする事で、ゆったりとした見やすい映像になります。
プラネタリウム番組では、”ゆったりとした心地よさ”は重要な要素なのです。
なので、GH5では、Gimbal Stabilizer (Zhiyun Crane)に乗せて、動きのある映像を2880×2880 60fpsで撮影する事が殆どです。
東京のビル街をGH5+Gimbal Stabilizerで撮影した通り抜ける映像を、プラネタリウムのドームスクリーンで見ると、本当に現場に居るような臨場感を味わえます。これこそヴァーチャル・リアリティVRです。
東京の街をこのように「歩き撮り」「走り撮り」したドームマスター映像をYoutubeの360度VR、つまり、Equirectangularへ変換した動画をYoutubeにアップしました。
これは”ゆったりとした心地よさ”とは真逆の「VR酔い」を敢えて狙ったものです。
3D映像登場の初期の頃に、やたらと飛び出す3Dで特徴を強調したように、VRならではの特徴は、囲まれた空間を前進して進むような、周りの風景がどんどん後ろに流れていく映像が一番体感しやすいのではないでしょうか?
東京ストリート VR Tokyo Street in Motion ( Hyperlapse & Slowmotion )
Equirectangularへの変換はAMATERAS Dome Player を使用しました。
元のドームマスターは、円周魚眼撮影と同じ半球なので360度VRの後ろ半分は黒塗りになっているのですが、最近のGoogleの調査では、360度VR映像では半分の180度すら見られていない。75%の時間が前方90度の視聴だった。という調査結果が発表されました。
そこで、前方向180度のみに特化した「VR180」という新しいVR規格が提案されました。
今回アップしたVR動画は、「VR180」ではなく、後ろ半分黒塗りの「VR360」ですが、 動きのある映像では、キョロキョロ見渡している余裕が無くなり、前方向の広視野角映像だけでも充分臨場感があり、「VR酔い」で目が回るようなコンテンツも作れるのです。
VRでは、360全方位に映像がある事よりも、広視野角の視界の中で、いかに演出する事の方が重要です。これはプラネタリウム番組制作でも長年研究されてきた事なので、「VR180」の登場はなるべきしてなった結論だと私は思っています。
もちろん、全方位360度VRならではのメリットが出せる用途があるのも事実です。
「VR180」と「VR360」のそれぞれのメリットを活かしたコンテンツ作りが映像制作者に求められる段階になったと感じています。
今回は、まだテスト的な試みで、実際にVR映像にしてみると課題もいろいろ見えてきました。
しばらくは、試行錯誤を繰り返すと思いますが、プラネタリウム映像とVR映像は、撮影も編集も面白いテーマです。