アクアジオグラフィックでは2009年より4Kムービーカメラ RED ONEを導入し、4K映像を沢山撮りためてきました。
おかげさまで、4K関連製品を開発している国内、海外の数多くのメーカーさんへ、開発目的、販促目的で4K映像素材、
4Kプロモーション映像を提供させて頂きました。
メーカーさんがお求めになられる4K映像は、とにかく高画質である事が必須条件です。
なので、提供する映像データのフォーマットも、16bitのTIFF連番、つまり非圧縮データが殆どでした。
REDの動画RAWフォーマットの.R3Dデータでの提供もよくあります。
また、4K放送規格が60pで規格された事で、「4K60p」というのが、メーカーさんが求める必須スペックとなっています。
16bitのTIFF連番は、非常に高画質であるもののデータ容量は膨大です。
4K60pでは、1秒で3GB、つまり1分で180GBのデータ容量になります。
一方、QuickTimeムービーでも、高画質での映像提供が可能です。
QuickTimeムービーのメリットは、高画質でもTIFF連番より容量が小さく扱い安い点です。
ここで改めてQuickTimeの高画質コーデックについて整理してみました。
圧縮:なし RGB4:4:4 8bit
非圧縮8bit-4:2:2 YUV4:2:2 8bit
非圧縮10bit-4:2:2 YUV4:2:2 8bit
アニメーション RGB4:4:4 8bit ロスレス圧縮
ProRes422 HQ YUV4:2:2 10bit DCT圧縮
ProRes4444 YUV4:4:4 12bit DCT圧縮
ProRes 4444 XQ YUV4:4:4 12bit DCT圧縮
「ProRes 4444 XQ」は今年になって追加されたProRes4444よりもさらに高品質なコーデックとされています。
高画質が必要なケースでも、必ずしも非圧縮16bitのTIFFでなくても問題無い場合もあります。
その場合、QuickTime ProRes4444が最適な形式である、と「思っていました。」
「思っていました。」と、過去形なのは、先日、こんな事がありました。
あるメーカーさんへ、4K60pの映像をQuickTime ProRes4444で納品しました。
すると、映像を細かくチェックすると、「輪郭が不自然にギザギザになっている所がある」と、指摘を受けました。
具体的には、以下のサンプル(静止画の切り出し)をご覧ください。
※4Kから一部を切り出し200%に拡大
※ProRes4444の方はコントラストのはっきりした境界部がギザギザになっている
※下の非圧縮TIFFの方は境界部も滑らか
最初は、RAW現像の問題だと考えたのですが、同じパラメータでRAW現像し16bit TIFF 出力したものと比較し、
QuickTime ProRes4444による圧縮による劣化が原因だと判明しました。
ProRes4444は高画質とはいえ、しょせんブロック単位で圧縮するDCT圧縮です。
細部を丹念にチェックをすると非圧縮との画質差はあります。
メーカーさん、特に開発に携わっている方々の目は非常に精細で厳しいものです。
※ちょっと余談ですが、水中映像は、画質評価用のサンプルとして非常にニーズの高いサンプルです。
「明るい珊瑚礁に群れるカラフルな小魚の無数の群れ」の映像には、不規則な複雑な模様、カラフルな色、水のグラデーション、光のコントラスト、不規則で複雑な動き、といったデータ圧縮に厳しい条件が集約された映像です。
このような事がある毎に再認識するのが、RED のRAWデータ .R3D の完成度の高さ、素晴らしさです。
.R3Dは、RAWデータとはいえ、かなり高圧縮のデータです。
圧縮率という点では、ProRes4444よりも高圧縮なデータです。
しかし、圧縮方式が Wavelet アルゴリズム を採用している為、DCT圧縮の欠点とされる「ブロックノイズ」が原理上発生しない
圧縮方式なのです。
DCT圧縮の「ブロックノイズ」による画質の劣化は、上記のような境界部のギザギザ、グラデーション部の階段上のトーンジャンプ等で肉眼でも比較的わかりやすく見る人が見れば簡単に粗が見えてしまうのです。
一方、Wavelet圧縮の圧縮率を高くする事の画質の劣化が現れるとすれば、それは解像感の低下です。
おそらく「非常に繊細でゴチャゴチャした模様がボヤけてくる」と思われます。
しかし、REDの.R3Dに関しては、このような事を感じた事はありません。もし繊細さが失われる原因があるとしたら、ピント合わせの問題や被写体ブレ、カメラブレに起因する方が圧倒的に多いのではないでしょうか?
動きのあるムービーでは繊細な模様を高解像のまま動かす表現は、逆にマイナス効果になります。
チラツキやパラパラ感の原因になります。ずっと見てると目が疲れます。なので、そのような映像には敢えて「ブラー効果」で
動きの方向へ映像をぼかす処理を施すのが映像表現の常識です。
そう思うと動画RAWの圧縮コーデックとしてWaveletを採用したRED社の先見の明には改めて脱帽です。
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RED EPIC撮影 4K60p高画質映像提供の話:QuickTime ProRes4444と非
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