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Channel: 水中カメラマンのデスクワークな日々
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「雲海と富士山」のちょっと真面目な考察

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秋は、「紅葉と富士山」も良いのですが、「雲海と富士山」を狙うのにも一番良い季節です。

秋の「雲海と富士山」狙いの気象条件は、

・移動性高気圧に覆われ、放射冷却の冷え込みが厳しい深夜から朝方。

・山に囲まれ、川や湖のある盆地は、特に雲海が発生しやすい。
 (富士五湖、忍野八海、甲府盆地、諏訪湖、芦ノ湖、清水吉原 etc)

・雨の後、移動性高気圧に覆われた翌朝は、大規模な雲海が発生しやすい。


しかし、このような条件が当てはまると思い雲海の撮影へ出かけても、外してしまう事もあります。
近くの雲海ポイントでも、ある場所では発生しているのに別の場所では全然ダメな事もあります。

前日との温度差が小さかったから? 風があったから? と理由を推測しましたがそれだけでは説明できないケースを多々経験しました。

先日の11月2日の雨、翌3日の晴れは、高確率で雲海が期待できる条件でした。
もちろん雲海は発生してはくれましたが、雨上がりの雲海にしては、かなり物足りない雲海でした。

↓の冒頭の映像は、11月3日の深夜~朝の甲府盆地の雲海です。



雨上がりであれば、甲府盆地全体を覆い、場合によっては富士山が隠れてしまう程の雲海が期待できたのですが。。


そして、翌4日も、本州は移動性高気圧に覆われる絶好の雲海日和。
この日、私は河口湖湖畔で夜通しタイムラプス撮影をしました。
なんとなく「雲海にはならない」気がしたからです。
それを検証する意味でも、あえて湖畔で一晩タイムラプス撮影をしました。

実際、予想通り雲海は発生しませんでした。

富士山 河口湖

しかし、湖畔に設置したカメラや三脚が、結露でびしょびしょに濡れています。
湿気が無いわけではありませんが、雲海(霧)は発生しなかったのです。
湖面からは気嵐(けあらし、蒸気霧)が発生していますので、冷え込みは十分だったはずです。

↓これは、日の出前の写真です。
富士山 河口湖

右側の低い薄い雲の層は、西湖から流れてきた雲海の切れ端のようなものです。
上空の薄い雲も発達すれば雲海になったかもしれませんが、すぐ消えてしまいました。


その後、河口湖から忍野、山中湖へ移動しました。
そして、忍野、山中湖は、濃い霧です。
つまり、高台から見れば雲海と富士山を狙う絶好のチャンスだったのです。

↓この写真は、霧が晴れてきて隠れていた富士山がやっと見えた時です。
富士山 山中湖

なぜ、西湖、忍野、山中湖では雲海(霧)が発生して河口湖は発生しなかったのでしょう?

私の推測では、上空の乾燥した空気の層と上空の風向きでは? と考えました。

11月3日と4日は、冬のようなクリアの快晴で東京からも富士山が良く見えたようです。
つまり、上空の空気は湿気の少ない乾燥した空気だったと推測します。

11月3日の午後の富士山は、雲がかかっていましたが、河口湖側だけ雲がありませんでした。
雨の翌日の富士山周辺は、昼間は気温の上昇とともに気流が発生し雲がかかってきます。だいたい富士山の風下側(上空)から雲が広がっていくようです。吊るし雲が富士山の風下側にできるのと同じ機序でしょうか。
つまり河口湖側から風で乾燥した空気が運ばれ富士山にぶつかり、富士山の風下側では前日の雨により湿度の高い空気が巻き上げられ雲が発生した? 単純に河口湖側の湿った空気を乾燥した風が押し流した?
(上の動画の1分~1分30秒辺りは、11月3日の午後の櫛形山方面からの富士山
河口湖の上だけ雲がありません。)

そして夜は冷たい乾燥した重い空気の塊が、北側(新道峠側)の山から河口湖へゆっくり流れ込んで来るので、湖面で気嵐(蒸気霧)を発生させるもすぐ消えてしまったという事でしょうか。

4日の昼間は、富士山の周りには雲がまったく無いカラッとした快晴でした。


翌5日の朝。この日は夜中から御坂峠で夜通しタイムラプス撮影をしました。
そして、朝方には河口湖は雲海に覆われました。

富士山 河口湖 霧 雲海 御坂峠

しかし、雲海としては物足りないものです。
上空の乾燥した空気の層が、下層の雲海を抑えこんでるように見えませんか?

↓以前の撮影ですが、この位は欲しいですね。
富士山 河口湖 霧 雲海 御坂峠
こういう日は、日の出後の雲海の動きは非常にダイナミックです。
そして雲海は上空に拡散して消えていきます。昼の青空の抜けはイマイチになります。

↓雲海が晴れてくるとこんな感じで、非常に層の薄い雲海でした。
富士山 河口湖 霧 雲海 御坂峠
上空に拡散するというより単純に消えて無くなります。そして昼の青空はクリアです。

ちなみに、御坂峠で設置したカメラや三脚はまったく結露していません。
この時期ならどんな場所でも多少は結露するものですが、まったく結露しない程、御坂峠の高台では空気が乾燥していたという事です。

つまり、上空は乾燥した空気。湖面上数十mの層は、気嵐(けあらし、蒸気霧)による霧の層だった。と推測します。


↓11月4日深夜~朝の河口湖湖畔、11月5日深夜~朝の御坂峠からの河口湖のタイムラプス映像です。


改めて意識して見ると上空の乾燥した空気の層が、湖面付近で発生する霧を押さえ込んでいるように見えて来ます。

富士山と雲海狙いで撮影をするようになり、そろそろ10年近くになりますが、雲海予測は本当に難しいです。
確実に言える事は、風の強い日は絶対ダメです。


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